『箱根板橋日記』毎週火曜更新|長嶺 俊也 Nagamine, Shunya デザイナー 1979年生まれ         


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第19回 「ハングリー精神と最高の晩酌」 2013年4月23日

 若い頃は、どうも「ハングリー精神」のことを、「天才は往往にして中々社会一般の評価を得られず、経済的に貧乏な状況に陥りやすく、常にお腹が空いているけどストイックにがんばる事」と、勘違いしていた気がする。

 若いバカというのは恐ろしい生き物で、そうなると貧乏や、空腹を肯定的に捉えはじめ、やがてそれが正義になる。

 ちゃんとバイトに精を出し、実入りのある人間を「このブルジョワめ!」などと激しく罵倒し、綱紀粛正という名の集り(たかり)をくり返したりする。

立派な狂信的恐喝である。

 
 ハングリーといえば、最近料理にハマっている。といえば、と言うほどでもないか。

 まあ、他に書くこともないのでかまわずに続けるが、食事は毎日2~3回はする物なので、ハマろうがハマるまいがその度に今までも料理はしていた。

 しかし、今回わざわざハマったというからには今までとは少し事情がちがうのだ。

 どうちがうかと言うと、大根の千切りをしていると楽しいのだ。

 絹さやのスジを取っていると心が落ち着くのだ。

 なんだか優しい気持ちになってきて、新玉ネギなんかがカワイク見えて来たりするのだ。(オレ、ちょっとあぶないかなぁ)

 ま、つまり恥ずかしながらどうも僕の趣味は、料理らしいぞという事を自覚してしまったというわけなのだ。
 
 
 『趣味の料理』に目覚めてからの僕の課題は、いかに最高の晩酌をプロデュースするかという事で、その献立はその日の昼前、大体十一時半位からすでに考えはじめている。

 すでにメインが決まっていたり、飲みたいお酒が決まっていたり、朝市に行った日は仕入れとにらみ合いながらと、常に状況はバラバラだが、気持ちはすでに約十時間後の最高の晩酌の実現のために燃えている。

 自宅を仕事場にしてデザインを作っているので、急ぎのプロジェクトや、打ち合わせで遅くなったりしない限り、夜八時の終業時刻後から料理をはじめる。

 と言っても、まずは洗い物から。

 これは、関係のない作業を挟む事で、脳を一度リセットし、仕事から料理へと気持ちを切り替え、最高の晩酌をプロデュースするために集中力を高める大切な儀式なのだ。

 洗い物が終わったら料理スタートだが、ここでもいきなり包丁は握らない。

 まずは段取りを考える。最高の晩酌のために重要なのは、この「段取り」であると言っても過言ではない。

 料理を一番美味しい状態で味わうために、温かいものは温かく、サラダはシャキッと冷たい内に、唐揚げはカリッと揚げたて熱々で、ビールはもちろんキリッと冷え冷え。すべてを最高の状態で食卓に並べ、同時に自分の尻も椅子につけるというのは中々容易な事ではないからだ。

 あらゆる事を計算しつくし、段取り通りにスムーズに事が運ぶ様、食器や調味料などの準備をしていく。ここを間違えるとすべてが台無しになってしまうので、一番神経を使う所なのだ。

 なので、僕の力量では最初にだせるメニューはサラダを入れて三品くらいが限界。少し食べて落ち着いて来てから、途中で一品、二品を追加する事が多い。これも下ごしらえ迄は最初にしておいて、すぐに出来あがるように準備しておく。そうすれば、場が途中で途切れる事もない。

 何度も言うが、最高の晩酌を楽しむためには、段取りが一番大事なのだ。

 お酒はビールからはじまって、日本酒かワインをその日の料理によって用意しておく。

 最高の晩酌のためのメニューや酒類は、その日の気温などによっても影響されるので、日々天気のチェックも欠かせない。まったく気が抜けないのだ。
  

 小説家のジョン・アーヴィングが何かのあとがきで、「料理はクリエイティブなのに、プロセスをキチッと守ればちゃんと結果が返って来る所がいい」、というような事を言っていた覚えがある。だから、原稿書きの息抜きにちょうどいいというような話だった気がする。

 カッコイイ言い方なので、僕も同感だという事を強く言っておきたい。もっとも、僕の場合は趣味の合間に仕事をしてると言われかねないが。


 ハングリー精神へ憧れていた眩しいほどハツラツとしたあの頃の自分はすでに消えてなくなってしまい、今や「自分へのご褒美」「馬の鼻先に人参」「快楽主義」という言葉を日々実践しているオジサンが僕なのだが、ま、それでも今夜もこうして美味しい晩酌が楽しめたのだから、本日も我が人生はとりあえず良かったのではあんめーか、などと思うのであった。

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by nagamineshunya | 2013-04-23 12:25 | 箱根板橋日記