『箱根板橋日記』毎週火曜更新|長嶺 俊也 Nagamine, Shunya デザイナー 1979年生まれ         


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第24回 「カツオのタタキ発注作戦」 2013年5月28日

 毎週、月曜日と木曜日になるとうちの前まで魚屋さんが行商に来る。

 行商に来る魚屋さんは「UOMASA」という魚屋さんで、これはもしかしたら「魚政」か、「魚雅」か、はたまた「魚昌」かもしれないが、車にはアルファベットで「UOMASA」と書かれているので、これが正式表記という可能性も充分ある。

 だが、魚屋さんは50才過ぎのいつもニコニコ笑っているおじさんが一人で来て、「俺が、うまいって思うものじゃなきゃ入れねえもん。」と普段から言っているので、「魚正」という字が一番似合っている気がする。

 このおじさんが、実はただ者ではなくて、ものすごい腕の持ち主なのだ。

 なんの腕かと言うと料理の腕で、お刺身は角が「ピン」と立っているし、湯引きした鯛が盛り合せに入っていた時など嬉しくて嬉しくて、これだけで我が家に居ながら割烹にでも来た気分になる。もちろん、魚の質も良いのだが、おじさんの腕がさらにお刺身を美味しくしているというのは、客の中では誰もが口を揃えるところで、それは食べてみればすぐにわかるのであった。

 自家製のお惣菜もあったりするのだが、これもまたうまくて、この間の小ダコの中華風(ザーサイと和えてある)などは、小ダコが信じられないくらい柔らかくて、ピリ辛の中華風の味つけの塩梅も抜群。最高のビールのおつまみであった。

 味噌漬けや、みりん干し等も自家製で、これもそれぞれに合う魚が入った時に作って、最高の干し加減のものを持って来てくれる。こんな贅沢な事あるだろうか。

 
 この間、いつものように近所のご婦人方にまざって井戸端会議をしながら、自分の順番が回って来るのを待っていたら、一人のご婦人が「カツオのタタキだけど、日にちが決まったら注文するから。」と言うではないか。

 「カ!ツ!オ!の!タ!タ!キキキキ!!!!」

 急に取りみだしてしまったが、何を隠そう、僕は魚の中では圧倒的カツオ命の人生を送って来ているので、この会話に一気に逆上してしまい、「カツオのタタキ、あるんですか!」と、前のめりになって聞いてしまった。

 すると、ちゃんと藁で炙って作る本格派なので、面倒だから普段はやらないけれど、何本か注文がまとまれば作るのだそうだ。なので常連さん達は自主的になるべく数を集めて注文しているそうなのだ。そこで僕は瞬時にして、我が家と、妻のおじいちゃんとお母さん、それから伯母さん一家と、近隣に住む一族の胃袋を集結させた、「カツオのタタキ発注作戦」を企てたのであった。

 折しも季節は初鰹の頃である。一族みな誰も反対する物もなく、無事に発注の運びとなった。

 そして、発注した次の月曜日。めでたく我が家のものとなったカツオのタタキは、3キロのカツオをおろした堂々のサイズの柵が三本。 一本はうちの取り分となり、残りは一族に分配した。

 あまりの嬉しさに、何度も冷蔵庫の中をのぞいて、「ムフつ」っと笑ってまたドアを閉める。夜が待ち遠しくてしょうがないのだ。

 そして、今日も一日良く働いた等と思う間もなく、「カツオ!カツオ!」、「ビール!ビール!」と台所に突進して準備を始める。

 ガルル、等と唸りながらも、おじさん特製のタレに、大葉、茗荷、生姜、それとエシャロットもあったので、それも直感的に刻んで入れる。

 カツオは分厚く、どすん!どすん!と切って大皿にドサドサと乗せていく。よく、飲み屋とかスーパーで、「お前はフグのつもりか!」言うくらい薄っぺらいの見かけるけど、あれはいけない。カツオは豪快にかじるくらいの方が断然ウマイ。

 そうして、冷えた缶ビールと大皿に乗せた大量のカツオのタタキを持って食卓へ行き、一週間待ちに待った黄金の瞬間。

 たっぷりとタレの付いたカツオの上に刻んだ薬味たちをうまく乗せて、エイヤ!っと口の中に放り込む。

 うまい!藁で炙る本格的なヤツを初めて食べたが、まわりの皮目の何とも言えない香ばしさ、香り、そしてその中の、ウソー!というくらい柔らかな身。思わず、ビールを飲むのも忘れて立て続けに三枚食べてしまった。そして、ようやく思い出して、ビールをグビリ。

 今度はキンキンに冷えたビールが口からのど元をスバヤク移動していき、その後味がさらに次のカツオのタタキを「ホシイ!ホシイ!」要求してくる。いやはや、もうこれはまったくもって本格的に文句無しのうまさなのだ。

 おじさん特製のタレも色々な香りが複雑にするタレで、これは肉でもなんでもイケル、と思った。おじさんが「このタレだけでご飯が食べられるってみんな言うんだよ~」と、言っていたのは本当だったのだ。

 今回は完全に自慢話で終わってしまって申し訳がないが、こうして自慢が出来る魚屋がいるというのは、まったくもって幸せな人生であるな、と思うのである。

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by nagamineshunya | 2013-05-28 18:36 | 箱根板橋日記