『箱根板橋日記』毎週火曜更新|長嶺 俊也 Nagamine, Shunya デザイナー 1979年生まれ         


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第25回 「から揚げの巡礼」 2013年6月4日

 なんだか梅雨入りをしたそうだが、ここ三日ぐらいは夏を感じさせるような日差しが続いている。

 空気も乾燥していて、サラッとした風が気持ちいい。

 こういう日は、ビールが断然うまい。そして、ビールに一番合うおかず系おつまみといえば、断然「鶏のから揚げ」である。

 僕は毎晩晩酌をしている。そしていつもビールからスタートするので、当たり前だが毎日ビールを飲んでいるということになる。だから、必然的に鶏のから揚げもかなりの頻度になる。もう三十代半ばにさしかかって来たが、今でも平均すると週に二回は食べていると思う。

 鶏のから揚げと言えば、最近有名になったのが大分県の中津市である。

 理由は、戦後の食糧難対策としてこの辺りに養鶏場が一杯出来たからだそうだ。自然、市民たちによる鶏肉の美味しい食べ方の追求がはじまり、その結果家族の食卓では唐揚げが多く食べられるようになり、市内には六十店以上のから揚げ専門店ができ、今ではから揚げの聖地とまで呼ばれるようになってしまったということらしい。

 にわかには信じられない話だが、という事は、「鶏肉の食べ方はつくねが一番だ」、ということになっていたら、今頃つくねの聖地になっていたのだろうか。でも、つくねじゃあねぇ。

 話がそれた。とにもかくにも、なにはなんであれ、聖地である。エライのである。

 エルサレムはイスラム教、キリスト教、ユダヤ教の35億人が聖地としてたたえる場所だが、こちらは中津市民8万5676人(平成二十五年五月三十一日現在)が暮らす『鶏のから揚げの聖地』である。

 自分の故郷、人生のルーツの地が「鶏のから揚げの聖地」と呼ばれる事に、中津市民たちが何を思っているか、そこら辺少し心配だが、から揚げ好きとしては、ぜひ一度くらい巡礼してみたい気もするかもしれないような気がしている。

 この、中津を鶏のから揚げの聖地としたのが、JKAで、以下はJKAに関するウィキペディアからの抜粋。

 〈一般社団法人日本唐揚協会(にっぽんからあげきょうかい、英称:Japan "KARAAGE" Association 略称:JKA)は、日本で生産されているから揚げに関する一般社団法人。唐揚げが一番好きで唐揚げを食べると幸せになれる人たちによって組織されている。〉

 どうです。一気に宗教臭くなって来たでしょう。中津は彼らにとって聖地であり、会員達は幸福(=から揚げ)を求める巡礼者となり、巡礼の旅に出るのでしょう。中津へ。(バカにしてないからね。むしろ親近感を抱いてますよ)

 なんといっても、中津は市内に六十軒以上のから揚げ専門店が立ち並び、JKA60というご当地アイドルがいる。うそである。さらには無差別に民家の玄関を開けて突撃していっても食卓には必ず鶏のから揚げ。冷蔵庫には昨日のから揚げ、冷凍庫には一昨日のから揚げが入ってるっつーんだから、彼らからしたら、シアワセの入れ食い状態のような土地だろう。(ほんとにバカにしてないからね。むしろある種の尊敬の念すら抱いているのよ)


 中津のから揚げは中津から揚げと呼ばれていてお店や家庭によって多少の違いはある物の、一応本流のレシピのようなものがある。

 我が家ではそのレシピを遵守する基本的精神は保ちつつも、かなり簡略化したやり方で作っている(テキトウってことね)。いわば「引きこもり型」の、聖地巡礼者である。

 まず、鶏のモモ肉を買って来て、余分な黄色い脂や、血合い、スジ等を取り除く。次に、するおろした生姜とニンニク、醤油、酒、塩、一味、ごま油を混ぜた物に鶏肉を漬け込む。分量は好みでテキトウに。つけこむ時間もテキトウでいいが、すぐに食べたい場合は漬け込む前に鶏肉をフォークで何回か刺しておくと味がしみ込みやすい。

 片栗粉で薄く衣をつけて、油で揚げる。めんどくさくなければ、最初は低めの温度でうっすらきつね色になるまであげて一度取り出し、2分ほど置いて余熱で中にも火が通ったら、もう一度今度は高温でカラッと揚げる。面倒だったら、少し高めの温度で、揚げながらかき混ぜて、空気に触れるようにすれば同じ感じになる。油の温度の低めも高めも感覚で。2、3回もやればおぼえてくる。

 油は使いさしの物も混ぜる方がかえってうまいらしい。それから僕は友達の料理人に教えてもらったひまわり油を使うようにしたら、抜群にうまくなった。軽い仕上がりになって、カリッというより、サクッという感じになる。スーパーで気軽に手に入る割に、これだけでけっこうはっきりと違いがわかるので、ぜひ試してみて欲しい。

 から揚げの引きこもり巡礼者は、油の違いのわかるおとこなのだ。

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by nagamineshunya | 2013-06-04 16:53 | 箱根板橋日記