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『箱根板橋日記』毎週火曜更新|長嶺 俊也 Nagamine, Shunya デザイナー 1979年生まれ         


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第69回 「無印家電と男と昭和」 2014年4月8日

 無印良品というブランドが出来て33年だそうです。

 ということは、ぼくよりひとつ歳下のブランドということになります。

 つまり、ぼくは物心ついたころから、無印良品が世の中にあった世代で、中学生の時に地元の西友で無印のカンペン(缶ペンケース)を買ったり、ラグを親にねだったのをおぼえています。 

 今でも、無印良品にはよくお世話になっています。

 特に、仕事で着るスーツやシャツは無印ばかりです。

 仕事柄、あまり洋服で印象がつかないようにということを考慮しながら選んでいるのですが、それには大変重宝するのです。

 逆に、ぼくが無印で買えないものがあります。

 それは『家電』です。

 なぜ無印良品の『家電』は買えないのか。

 今回は、デザインの話であっても、あくまでも個人的な趣味のはなしと前置きした上で考えてみたいと思います。



 現在の日本の大手家電メーカーの作る商品の、見た目のデザインのレベルはハッキリ言って低いです。

 これは明白だと思います。

 水準、平均レベルが低いというよりも、もっと根本的な問題というか方向性というか、センス(優れたデザインの知識の積み上げ)の部分が足らないと思います。


 無印良品の家電は、その中ではましな方です。

 おそらく、イチからオリジナルで作った家電はなくOEMによるものだと思いますが、パーツを多少変更するくらいはありますが、基本的にはそうした他のメーカーの家電をホワイトのボディで塗りつぶして統一するのが、無印ブランドの家電の商品展開です。

 表面を白で塗りつぶすというのは、OEMする商品の本来の隠れたデザイン性を浮かび上がらせるという狙いのためで、無印良品自体のブランドアピールとしてはそれを見つけ出す審美眼、セレクト力があるということになるでしょうか。

 意地悪な言い方をすれば、白にすればなんでもとりあえずシンプルという価値だけはつけられるという、苦肉の策とも言えるかもしれません。


 ぼくはデザイナーなので、基本的にはデザイン性の高いものが好きです。

 しかし、自宅に置くとなると、ぼくはこのコンセプチュアルな白塗りの家具が苦手なのです。

 それはなぜなのか。


 ぼくは、職業柄つねにデザインの事ばかり考えています。

 でも、日曜日は自宅で夕方の五時半から笑点、ちびまる子ちゃん、サザエさんの、ゴールデンリレーをだらだら見るのが好きです。

 そこには、昭和の名残が色濃く残っていて、それはまさしく自分の育ってきた時代の日常の欠片です。

 約一時間半の間、その今は無くなりつつある自分が育った昭和時代の日常にとっぷりとつかるのが好きなのです。

 そして、その目下わが生活においての宝の時間を思い浮かべると、どうしてもあの無機質な白塗りの家電を買う事に躊躇してしまうのです。



 ナガオカケンメイさんが1960年代の日本の工業デザインがいかに力強いかという事を書いている本を読んだことがありますが、その頃は新しい技術がどんどん開発され、その技術を使った新しい家電がどんどん企画され、デザイナーはそうした今まで誰もデザインした事のない商品をデザインできるという時代でした。

 ある意味、「創造するデザイン」です。

 ぼくは、この時代のものこそ「昭和時代の家電」だと思います。


 無印も、昭和生まれのブランドです。

 ですが、無印の家電は「創造するデザイン」ではなく、「整理するデザイン」だと思います。

 少し大げさにいうと、その家電が生活の中で活きるという前提ではなく、系統をアカデミックに統合しながら整理していく、良い要素のみを残そうとするデザインという感じです。

 これも、すごくストイックな行為ですが、無印の家電の場合はそれがさらにアカデミックな方によりすぎているように思います。

 ですから、ぼくのように笑点をこよなく愛する人間の部屋には、無印の家電は少々まじめすぎて、一緒の部屋にいると少し気まずいというのが心情です。

 そこにはやはり、エネルギッシュでカッコいいけど、どこか滑稽で憎めない、そんな昭和時代の家電が欲しいのです。


# by nagamineshunya | 2014-04-08 20:31 | 箱根板橋日記